4月から5月にかけての、雨上がりの暖かい昼下がり。窓際や浴室の近くに、羽の生えた小さな虫がたくさん落ちているのを見つけて、ぎくりとした経験はありませんか。それは、シロアリの羽アリかもしれません。

シロアリは、家の土台や柱といった、住まいを支える大切な木材を内側から食べてしまう害虫です。やっかいなのは、被害のほとんどが床下や壁の中など目に見えない場所で進むことです。気づいたときには、床がふわふわと沈む、柱を叩くと空洞のような音がする、というところまで進んでいるケースもあります。

「新築のときに防蟻処理をしてもらったから大丈夫」と考えている方も多いのですが、その効果は永久ではありません。この記事では、シロアリ被害が起きやすい場所、新築時の防蟻処理と「5年」という数字の意味、自分でできるセルフチェック、再処理の方法と保証の確認ポイントまで、時系列に沿って整理していきます。

シロアリ被害は「見えない場所」で静かに進む

日本の住宅に被害をもたらすシロアリは、主に「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」の2種類です。

ヤマトシロアリは、北海道の一部を除くほぼ全国に生息しています。湿った木材を好むため、床下や浴室まわり、玄関の土間に近い部分など、水気の多い場所で被害が起きやすいのが特徴です。羽アリが飛ぶのは、主に4月から5月にかけての昼間です。

イエシロアリは、関東より西の、主に温暖な沿岸部に生息しています。乾いた木材にも水を運び込んで食べ進めることができ、1つの巣の個体数も非常に多いため、被害の規模はヤマトシロアリより大きくなりがちです。羽アリが飛ぶのは6月から7月ごろの夕方から夜にかけてで、明かりに集まる習性があります。

どちらのシロアリも、光や乾燥を嫌い、土の中から「蟻道(ぎどう)」と呼ばれる土でできたトンネルを作って建物に入り込みます。そのため、住んでいる人の目に触れる場所に姿を見せることはほとんどありません。

被害が起きやすい場所

家の中でとくに注意したいのは、次のような場所です。

・浴室・洗面所・キッチンの床下:水まわりは湿気がこもりやすく、もっとも被害が多い場所です

・玄関まわり:土間コンクリートと木材の接点があり、侵入口になりやすい場所です

・基礎の外周部:基礎に接して植木鉢や木材、段ボールなどが置かれていると、そこを足がかりにすることがあります

・ウッドデッキや木製のフェンス:地面に近い木材は、建物本体より先に狙われることがあります

ウッドデッキを設置している、あるいはこれから検討している方は、デッキ自体のメンテナンスも欠かせません。素材選びやメンテナンスの考え方は「庭と併せてウッドデッキを作りたい!知っておきたいメリットとデメリット」でも紹介しています。

新築時の防蟻処理と「5年」という数字の意味

新築の木造住宅では、建築基準法施行令によって、柱や土台などのうち地面から1m以内の部分に、腐朽やシロアリを防ぐための措置をとることが定められています。そのため、多くの新築住宅では、建築中に木材へ薬剤を塗布したり、基礎の内側の土壌に薬剤を散布したりする「防蟻処理」が行われています。

木造住宅の土台や柱がどのように組み上げられているかは、「木造軸組工法における基礎と構造について」で詳しく解説しています。土台は基礎のすぐ上にあり、地面からの距離がもっとも近い部材です。シロアリ対策が土台まわりを中心に行われるのはそのためです。

ここで知っておきたいのが、一般的な薬剤の効果は5年程度とされているということです。新築時の防蟻処理に付いている保証も、5年間とされているケースがほとんどです。つまり、新築から5年が過ぎると、薬剤の効果が薄れ、保証も切れるというタイミングが重なります。

「5年経ったらすぐに被害が出る」というわけではありません。ただ、5年目以降は、新築時の処理だけに頼れる状態ではなくなる、と考えておくのが現実的です。

なお、最近は、ホウ酸系の薬剤や、木材の内部まで薬剤を浸透させた「加圧注入材」など、効果が長く続くとされる方法を採用する住宅会社も増えています。自宅でどのような処理が行われたかは、引き渡し時の書類や保証書に記載されていることが多いので、一度確認してみてください。書類が見当たらない場合は、建てた住宅会社に問い合わせれば教えてもらえるはずです。

自分でできるシロアリのセルフチェック

専門業者による床下点検が確実ですが、普段の暮らしのなかで住まい手が気づけるサインもあります。年に1回、とくに羽アリが飛ぶ春先の前後に、次の項目を確認してみてください。

シロアリ被害のセルフチェックリスト

・4〜7月ごろ、家の中や窓際で羽アリをまとめて見かけたことがある

・基礎のコンクリートの表面に、鉛筆くらいの太さの土の筋(蟻道)がついている

・浴室や洗面所、玄関の床を歩くと、ふわふわと沈む感じがする

・柱や敷居、幅木を叩くと、中が空洞のような軽い音がする

・床下点検口から懐中電灯で照らすと、木材の表面にボロボロと崩れた跡がある

・基礎の周りに、木材や段ボール、植木鉢などを長期間置いたままにしている

ひとつでも当てはまる場合は、早めに専門業者や建てた住宅会社に点検を依頼しましょう。最後の項目は被害のサインではありませんが、シロアリを呼び込みやすい環境です。基礎のまわりはすっきりと片付け、雨水が溜まらないようにしておくだけでも、予防になります。

羽アリを見つけたときにやってはいけないこと

羽アリを見つけると、つい市販の殺虫剤を吹きかけたくなります。しかし、目の前の羽アリを駆除しても、巣そのものはなくなりません。むしろ、むやみに殺虫剤を使うと、シロアリが危険を察知して別の場所へ移動し、被害の範囲を広げてしまうおそれがあります。

羽アリを見つけたら、まずは落ち着いて、何匹かを透明なテープで貼り付けたり、スマートフォンで写真を撮ったりして記録しておきましょう。黒っぽい普通のアリの羽アリと見間違えるケースもありますが、業者に見せれば判別してもらえます。

再処理(防蟻処理)の方法と業者選びの考え方

新築から5年を過ぎたら、被害の有無にかかわらず、再処理を検討するのがひとつの目安です。再処理の方法は、大きく分けて2種類あります。

バリア工法

床下の木材に薬剤を吹き付け、基礎内側の土壌にも薬剤を散布して、シロアリが入り込めない「バリア」を作る方法です。日本の住宅でもっとも一般的に行われています。

即効性があり、すでにシロアリがいる場合でも駆除と予防を同時に行えるのが強みです。一方で、床下に作業員が入れることが前提になるため、床下の高さが十分にない住宅では施工しにくい場合があります。また、効果の持続期間はやはり5年程度のため、定期的な再施工が必要です。

ベイト工法

建物の周囲の地面に、シロアリが好む餌(ベイト)を入れた容器を埋め込み、その餌を食べたシロアリが巣に持ち帰ることで、巣ごと駆除する方法です。

床下に大量の薬剤を散布しないため、においが気になる方や、小さな子ども、ペットがいる家庭で選ばれることが多い方法です。ただし、効果が出るまでに時間がかかり、定期的に容器の点検や餌の交換を行う必要があります。年間の管理契約になることが多いため、長い目で見た費用を比較することが大切です。

業者選びで気をつけたいこと

費用は、床下の面積、工法、建物の状態によって大きく変わります。まずは、建てたハウスメーカーや工務店に相談し、提携している業者がいないか確認するのがおすすめです。新築時の処理内容を把握しているため、話がスムーズに進みます。

ほかの業者にも見積もりを依頼して比べる場合は、施工する面積、使用する薬剤、保証の期間と範囲がそろっているかを確認してください。金額だけを比べると、施工範囲が狭いだけだった、ということもあります。

注意したいのは、突然訪問してきて「無料で床下を点検します」と持ちかける業者です。床下の写真を見せられて不安をあおられ、その場で高額な契約を結んでしまうトラブルは後を絶ちません。迷ったら、その場では契約せず、家族や建てた住宅会社に相談してから決めるくらいで、ちょうどよいと思います。

築年数ごとに見るシロアリ対策のスケジュール

ここまでの内容を、築年数に沿って整理しておきます。あくまで一般的な目安ですが、カレンダーや住まいのメンテナンス記録に書き込んでおくと、うっかり保証を切らしてしまうことを防げます。

新築〜4年目

新築時の防蟻処理が効いている期間です。とくに対策は必要ありませんが、保証書の保管場所を家族で共有しておき、年に1回のセルフチェックを習慣にしておきましょう。外構工事やウッドデッキの設置で基礎まわりに手を加えた場合は、新築時の処理範囲を壊していないか、施工会社に確認しておくと安心です。

5年目

最初の大きな節目です。保証の期限が切れる前に、建てた住宅会社や防蟻業者に床下点検と再処理の見積もりを依頼します。保証の延長には「期限内の再処理」が条件になっていることが多いので、期限を過ぎてから慌てて連絡するのは避けたいところです。

10年目

2回目の再処理の時期と、新築時の瑕疵担保責任の期間が終わる時期が重なります。外壁や屋根の点検もこのころに行うことが多いため、まとめて点検を依頼すると、足場代などの費用を抑えつつ住まい全体の状態を確認できます。

15年目以降

5年ごとの再処理を続けるのが基本です。この時期になると、給湯器や水まわりの設備の交換も始まります。浴室やキッチンのリフォームのタイミングは、普段見えない床下の状態を確認できる絶好の機会なので、工事の際に床下の木材の状態もあわせて見てもらうことをおすすめします。

保証とアフターサービスで確認しておきたいこと

新築住宅には、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分について、引き渡しから10年間、売主や施工会社が責任を負う「瑕疵担保責任」があります。詳しくは「新築住宅を建てるなら押さえておきたい『瑕疵担保責任』」で解説していますが、ここで誤解しやすいのが、シロアリ被害はこの10年保証とは別の扱いになることが多いという点です。

シロアリ被害は、防蟻処理を行った業者が発行する「防蟻保証」で対応するのが一般的です。保証期間は前述のとおり5年が多く、期間内に被害が出た場合は、駆除や修理の費用を一定の範囲で負担してもらえます。保証を延長するには、期限内に再処理を行うことが条件になっているケースがほとんどです。

確認しておきたいのは、次の3点です。

1.防蟻保証の期限がいつまでか(保証書が手元にあるか)

2.期限内に再処理を行えば、保証を延長できるか

3.住宅会社の定期点検に、床下点検が含まれているか

ハウスメーカーによっては、定期点検のなかで床下まで確認してくれるところもあります。あるといいアフターフォローの内容については、「住宅を建てる時に確認したい!あるといいアフターフォロー4つの内容」もあわせて参考にしてください。

Q. 鉄骨造の家なら、シロアリの心配はいりませんか?

A. 柱や梁が鉄骨でも、床の下地、内装材、収納の棚板など、住宅には多くの木材が使われています。また、シロアリは断熱材をかじって通り道にすることもあります。建物が傾くほどの被害になることは少ないものの、まったく心配がないわけではありません。鉄骨造であっても、木造と同様に定期的な点検をしておくと安心です。

Q. 建売住宅を購入した場合も、防蟻処理はされていますか?

A. 新築の木造住宅であれば、建売住宅でも防蟻処理が行われているのが一般的です。ただ、処理の方法や保証の内容は売主によって異なります。購入前の重要事項説明や契約の段階で、防蟻処理の有無、方法、保証期間を確認しておくと、5年後に慌てずに済みます。

まとめ

シロアリ被害は、床下や壁の中など見えない場所で進むため、気づいたときには被害が広がっていることも少なくありません。新築時の防蟻処理は、一般的に5年程度で効果が薄れ、保証も同じころに切れます。新築から5年が経ったら、再処理を検討するひとつの目安と考えておきましょう。

あわせて、年に1回のセルフチェックで羽アリや蟻道などのサインを確認し、基礎のまわりに木材や段ボールを置かないといった日頃の予防も続けることが、住まいを長持ちさせる近道です。まずは手元の保証書を探して、防蟻保証の期限を確認するところから始めてみてください。